「レーザーガン? レーザーってあれでしょ? エステのシミ取りや永久脱毛なんかに使うやつ。もしかしてレーザー脱毛って痛いの?」
「エステと一緒にするな! …ったく、おまえと話してると力が抜ける。とにかく当たらないように気をつけろ。100年後の技術はオレたちの常識とは桁外れなんだ」
「炎の玉!」
 2人は断続的に炎の玉を放ち続ける。それは影の進攻をある程度防いでいて、影はなかなかこの部屋の中にまで到達することはできないみたい。シュウがレーザーガンと呼んだ光の筋も、そのほとんどが次元の扉によって影に跳ね返ってる。あたしはいてもたってもいられなくなって、ろうそくの炎の前で祈りの姿勢をとったの。
「命の巫女、あとはお願い。リョウの様子を見てくる」
「え? …判ったわ。任せて――」
 言葉の最後までは聞かずに、あたしはこの場所でもはっきりと感じられる、でもトンネルのときよりは少し気配を弱めた神様に同調した。
 神様に寄り添いながら感覚を広げていくと、まずは左側3つの通路にひしめいている影たちの姿と、彼らを操る影本体の意識を感じることができた。2人の火の玉攻撃はそれぞれの通路にいた先頭の影をいくつか殺しているようで、そのあとも断続的に飛び込んでくる炎に阻まれて、なかなか先へ進むことができないでいるみたい。2人の炎が飛び込む間隔はそれほど短くないから、ひとまず通路の曲がり角に身を隠して、火の玉が飛び込んできた次の瞬間に走り込んでレーザーガンを撃つ、っていう作戦を取っているように見える。でも、シュウと命の巫女の炎はタイミングが少しずれているの。だからほかの通路から発射されたレーザーガンが次元の扉に跳ね返されて予告なく飛び込んできて、むしろ自分たちのレーザーガンで殺される影の方が多かった。
 あたしは最後に残された右の通路に視点を移動させる。その通路の入口には影の姿はなくて、しばらく進んだ先でいくつかの影の死骸を見ることができた。あたしはリョウの姿を求めて更に通路の先をさぐる。見つけたリョウは、通路の曲がり角の陰から半身を出して、飛び出してくる影になぜかレーザーガンで攻撃を仕掛けていたんだ。
 リョウの周囲にも何体かの影の死骸がある。リョウはその死骸からレーザーガンを奪ったみたいだった。
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