「馬鹿野郎! 1人で先走るんじゃねえ! 通路を1つ決めて全員で突き進んだ方が効率がいいだろうが!」
「敵の武器を確認してからでも遅くない! 飛び道具を持ってたらどうするんだ。挟み撃ちにあって全員なぶり殺しになるぞ」
「…クソッ。ユーナ! 左の通路と祈りの巫女を頼む。祈りの巫女、君はユーナから離れないで」
「判ったわ。2人とも気をつけて」
リョウに言い負けたシュウは一瞬だけ悔しそうな表情を見せたけど、すぐに頭を切り替えて目の前に次元の扉を展開した。隣で命の巫女が同じく扉を開くと、光の色が変わって2人の扉がつながったことが判る。人1人をすっぽりと覆うことができるくらいの扉だ。命の巫女は扉の位置を固定してくれたから、あたしはすばやく袋の中からろうそくを1本取り出して、ランプの聖火を移したあと床に立てた。
リョウは右の通路に飛び込んでしまって姿は見えない。だけど通路の奥からは明らかに足音とは違う音が聞こえてきて、あたしを不安にさせる。祈りの姿勢をとって感覚を広げればリョウの様子を見ることはできる。でもその反面、神様に同化すると自分の身体の感覚がなくなってしまうから、命の巫女に迷惑をかけてしまいそうで祈りに入る決心がつかなかった。
足音が近づいてくる。戦いの始まりは、通路の入口近くに影の姿が見えた瞬間だった。シュウと命の巫女とがほとんど同時に叫んだの。
「「炎の玉!」」
命の巫女は次元の扉に身を隠しながら、扉の右側に乗り出して呪文を唱えていた。あたしはその逆側から顔を出して初めて2人の火の玉を見た。人の頭ほどの大きさに見える炎は燃え上がるのではなく中心から渦巻くようにかたまっていて、2人の手のひらから放たれた炎が次の瞬間には通路の中で爆発したように見えたの。この通路の中もレンガ造りになっているようで、天井からいくつかのレンガがばらばらと影に降りかかるのが見えた気がした。
影の姿はまだはっきりとは見えなかった。薄く立ち込めた煙の中に、2人は2つ目の炎を叩き込む。次の瞬間、通路の先からシュウを狙って光の筋のようなものが向かってくるのが見えたの。それはシュウを守る次元の扉に吸い込まれて、命の巫女の扉から再び通路に向かって正面の壁の一部を破壊したんだ。
「気をつけろユーナ! レーザーガンを持ってる!」
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