どうやらリョウにもこの部屋の模様を読むことはできないみたい。
 リョウが正面の壁に向かって歩き始めたから、あたしたちもリョウから離れないようにあとをついていった。その壁にはほかの壁の模様とは違う、なにか文字のようなものがたくさん彫り込んであるように見えたの。1つ1つの文字はずいぶん小さくて、だから巨大な壁一面に描かれた文字はかなりの量だった。追いついてきたシュウがうしろでつぶやく声が聞こえる。
「なにかのプログラム言語みたいだな。ところどころピンクの色がついてるのはなんだろ」
 シュウが壁に触れたところを見ると、確かに文字の上にピンク色の絵の具をのせたように壁の色が変わっていた。
「この文字の意味が判るのか?」
「床のカイロズよりはマシだけど、こっちだって解析しようとしたら1ヶ月はかかるよ。だいたい100年後のプログラムがオレに読める訳ないじゃん。左の騎士にそこまで期待されても困るよ」
「そうだな」
 シュウはリョウの返事に一瞬ぴくっと反応を見せたけど、それ以上リョウが言葉を続けないだろうことが判ったのか、視線をはずした。こんな2人を見てるとあたしの方が緊張してきちゃうよ。
「ねえリョウ、シュウ、あっちの方からこの先へ行けるみたい。ここにいてもなにも判らないんだったらまた歩かない?」
 あたしは壁の右の方を指差して言った。部屋の右角のあたりには壁がなくて、入口近くにいたときには判らなかったけど、ここから見ると先が通路になっているのが見えたんだ。この部屋にはほかに出入口がないから、先へ進むにはここから出るしかないみたい。
「ああ。シュウ、命の巫女、行こう」
 そうして4人でひとかたまりになって通路へ入ると、その先はさっきのトンネルよりはだいぶ狭くて、少し曲がりくねりながらしばらく続いていた。ここには光の筋もなくて、白い廊下は人が歩くのに適した造りをしていたんだ。少しの間あたしは気づかなかったんだけど、不意にそのことに気がついて足を止めてしまったの。すぐにリョウが反応して声をかけてくれる。
「どうした? ユーナ」
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