のんびりしている間にシュウたちが遠く離れてしまったから、ちょっと床を見たあとあたしたちは急ぎ足で2人に追いついた。延々と長く続いているトンネルには横道がいくつかあった。それらを無視してしばらく歩くと、不意に1つのドアが道をふさいでいたんだ。
「とうぜんこれは入れってことだよな」
トンネルはここで終わっている。今のあたしたちにある選択肢は、このドアを入るか、あとは少し戻って横道の方に入ってみるしかなかった。シュウの声には誰も答えなかったから、シュウは一通りあたしたちの顔を見たあと、取っ手に手をかけて向こう側へ開いていたの。
ドアを開けた瞬間に明るい光が飛び込んできて、あたしはこのトンネルの外へ出られたんだと思った。でもその明るさに目が慣れてくるとそこがかなり広い部屋の中なんだってことが判った。真っ白な光に包まれた天井は常識外れに高くて、部屋の壁もずいぶん遠くにある。中は全体的に白っぽい色で統一されてたけど、部分的には白茶けたところやピンク色に見えるところもあって、壁や床には複雑な模様が刻まれていた。
さっきのトンネルと同じ、壁や床には光が走ってるんだけど、その光は一直線に進むのではなくて壁の模様の筋を辿るようにくねくね曲がりながら進んでいく。ある場所で生まれた光が別の場所で消えたりして、それが壁のあちこちでずっと繰り返されているんだ。この光にはもしかしたらなにかの意味があるのかもしれないけど、それはあたしには判らなかった。
「…シュウ、あたしこの模様にどことなく見覚えがあるんだけど」
「そりゃ、あるだろ。デンシカイロのカイロズだからな。しかもご丁寧におまえにも読めるローマ字と数字で書いてある。どうやらここがセイレキ2112年なのは間違いないみたいだな」
「それで? なんのカイロなのかシュウは判るの?」
「さすがに一目見ただけでそれが判るほどオレは天才じゃないよ。それとも1年かけて解析して欲しいか?」
「…意地悪。祈りの巫女にならあんなに親切なのに」
心なしか神様の気配が強くなっている気がして、あたしは周囲を見回した。そして、同じように周囲を見回していたリョウと視線を合わせる。あたしが首をかしげる仕草をすると、リョウは首を横に振ることであたしの無言の問いに答えてくれた。
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