シュウたちの声を聞きつけてリョウが戻ってきていた。そうして再び4人揃ったあたしたちは、命の巫女を先頭に2100番台の赤い扉へと歩いていったの。
「シュウの言うこと、だんだん混乱してきたよ。だって、これから開ける赤い扉も未来なんでしょ? 黄緑の扉となにが違う訳?」
「その説明、本気で聞きたいのか? おまえ」
「…いい。たぶん聞いても判らない」
 シュウと話ながら、命の巫女は心からうんざりしたような顔でため息をついた。あたし、さっきシュウと話していたときの自分の顔なんて知らないけど、きっと今の命の巫女と同じような顔をしていたんだろう。
 命の巫女が足を止めた赤い扉の前で、あたしたちも立ち止まって巨大な扉を見上げた。
「これか。2112年9月3日。これがセイレキなら108年後の世界か。オレたちが死ぬまでにコールドスリープの技術が完成してなければ、一生お目にかかれない場所だな」
 シュウは意味のよく判らないことをつぶやいたあと、あたしたちを一通り振り返って、その扉を開けた。
 扉の中はほかの扉と同じような石造りの部屋で、最初に扉を開けたシュウが中へ入っていく。そのあとを命の巫女が離れずについていって、あたしの隣にリョウが並んで一緒に入ってくれた。まもなくひとりでに扉が閉まり始める。
「気をつけろよ」
 リョウが言った一言には誰も返事をしなかった。やがて扉が完全に閉まると、一瞬だけ暗くなった部屋の中に光が満ち始める。
 まるで目の中に光が突き刺さるみたいだった。細い線の上をすばやく移動するような光がたくさん見えて、徐々に目が慣れてくるまでそれしか見えなかったんだ。そのうちしだいにはっきりと周囲の様子が見えるようになって、その場所が筒状のトンネルの中なんだってことが判ってくる。トンネルの壁を伝って、細い光が無数に行き交っている。なにしろスピードがものすごく早いの。1つの光を目で追うことすらできないから、もしかしたらその光は無数の小さな点が細い筋のように見えているだけなのかもしれない。
 今まで嗅いだことのない変な匂いと、小さな音が周囲を覆っている。
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