「まず年号についてだけど、正直に言えばオレが来たのは2004年じゃない。16年だ」
 あたしは意味が判らなくてきょとんとしていたみたい。だって、シュウは今16歳なんだもん。シュウの村が生まれてから今年で16年目なんだとしたら、シュウは自分の村が生まれる前の年に誕生したことになるよ。
「シュウの村はそんなに若い村なの? だとしたらシュウはゼロ年の生まれなの?」
「いいや、オレとユーナは63年の生まれだよ。オレたちの国ではオレが生まれた翌年に年号の改訂があって、新しい年号で再び1年から始まった。君は不思議に思うかもしれないけどね、オレたちが住んでいる国ではときどき年号を表わす数字が1に戻るんだ。国の正式文書にはこの年号が採用されてるんだけど、確かに不便なところもあるから、日常的にはよその国で多く使われている年号を借りてきて2004年と表記したりする。ほかに、国が60年くらい前まで使っていた暦もあって、それを使うとたぶん2664年になるんじゃないかな。つまり、2004年ていうのは本当は、オレたちとなんの関係もない数字なんだ」
 聞きながらあたしはすっかり混乱してしまって、シュウに説明を求めたことを後悔し始めていたの。シュウはきっと、あたしが質問するには頭が良すぎるんだ。命の巫女が一緒に聞いててくれればもっと簡単に説明してもらえたかもしれないけど。
「いきなりこんな説明をされても判らないよね。でも、この扉にある2004年は、君の村の起源とはまったく関係がない年から数え始めているから、君の村の500年後がオレたちの国になる訳じゃないんだ。そう考えれば、確かに2100年代の扉もオレたちとはまったく関係がない年号だって可能性もあるね。だけど、オレたちの扉にコウキを使ってないってことは、これが500年前の過去を表わしているとも考えられない」
「…」
「そんな訳で、2100年代が未来を表わしているのか、それとも過去を表わしているのか、実はオレにも判らないんだ。ただ、ここにある扉は間違いなく、影がオレたちが存在する時間と空間を移動するためだけに作られてる。オレたちの国には獣鬼やセンシャがあるけど、きっと影の本体は別の世界にあるはずだ。ということは、過去だろうが未来だろうが、この扉が影の国へつながってるのは間違いない」
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