シュウのことは今でも判らない。だけど、それはあたしには最初から判らないことなんだ、って。
「ねえ、2人はさっきまで何を話していたの?」
あたしの質問にはリョウは答えてくれなくて、代わりに命の巫女が話し始めた。
「たいした話じゃないわ。あたしが昔の思い出話をリョウに聞かせていたの。さっきあたしが幼い頃の風景を見たでしょう? 最後にドアから出てきた男の子をあたしが好きだったって話」
あの男の子のことを、命の巫女はリョウチャンて呼んでいた。あれはきっと命の巫女の右の騎士で、今ここにいるリョウのことだ。つまり命の巫女はリョウに告白していたってこと?
「それで? リョウはなんて答えたの?」
「ませたガキだな、って。…祈りの巫女、前にあなたが言ってくれたこと、そのままお返しするわ。――安心して。あたしにはシュウがいるから、あなたの婚約者のリョウを取ったりしない。ぜったい」
命の巫女の言葉には、もちろんあたしも驚いたけど、リョウの方が驚いた顔をしていた。命の巫女にはあたしの気持ちが伝わってる。だってこの人は、もう1人のあたしだから。
「あたし、命の巫女にそんなこと言った?」
「言ったよ。初めてシュウがあたしと祈りの巫女を比べたとき。あたし、そのときすごく悔しかったからよく覚えてるの。チャンスがあったらぜったい同じことを言ってやろうって思ってた」
そう言って笑いながらチラッと舌を出した命の巫女を見て、あたしも彼女が言った悔しいって気持ちが判ったの。これって、リョウよりもシュウの方がずっとカッコいいって、そう言われてるような気がするんだ。
「シュウとリョウだったらぜったいリョウの方がカッコいいもん! 背が高くてたくましくて、それですごく優しいんだから!」
「優しさならシュウだって負けてないわよ。頭もいいしね。すごく頼りになるのよ」
そうしてあたしたちが恋人の褒め合いを始めたら、さすがに照れたのか、リョウがシュウを探すと言ってどこかへ行ってしまったの。
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