「もしもリョウが心配なんだったらここでもう1度命の巫女に未来を見てもらってもいいし」
「おまえはここでも未来が見えると思うのか?」
「それは判らないけど、ここには神様の気配があるんだもん。試してみる価値はあると思うわ」
未来を見るだけじゃない。ここには神様の気配があって、しかも村の神殿にいるときよりもずっと身近に神様を感じることができるのだから、あたしの祈りだって届くかもしれないんだ。
そのあとはとりたてて会話もなく、扉の文字を10枚分書き写すと、シュウはやっとあたしたちをその作業から解放してくれた。
「で、なにか判ったのか?」
リョウが残りの紙を放りながら訊くと、受け取った紙を丁寧に床に並べながらシュウがつぶやく。
「――やっぱりそうか。だけどこれの意味が判らないな。…リョウ、重要なことがいくつか判ったよ。1つ目は、この世界ではオレたちの世界と同じくジュッシンホウが使われてるってこと。つまり、ここを作った知的生命体の指の数は片手5本ずつ、計10本だ」
「…それのどこが重要なんだ。敵の指が5本だったらここから抜け出せるとでもいうのかよ」
一瞬絶句したあと、リョウが更に低い声で言ったの。あたしの方は、シュウの言葉の意味がさっぱり判らなくて、口を挟むことすらできなかった。
「少なくとも4本や6本よりは遥かに確率が高いさ。リョウ、この扉の文字は数字なんだ。オレの考えに間違いがなければ、最初の4桁で年号を、あとの4桁で月日をあらわしてる。そこまではまあ、データをとってもらう前にも予測できたんだけど、判らないのは扉についた色の方だ。いくつかのサンプルが欲しい」
「なんだ、サンプルって」
「扉に入って確かめたいんだ。扉の色があらわしてるものがいったい何なのか知りたい。最初にオレたちが出てきた扉がピンク色で、次に入ったのは水色だっただろ? そのほかの紫色と黄緑色と赤色の扉を確認するのが必要だと思うんだ。それでたぶん、扉の謎が解ける」
リョウはしばらく黙っていたけれど、やがてシュウの意見を受け入れたようにうなずいた。
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