「なに訳の判らねえことを言ってやがる! だからおまえら神官は信用できねえんだ。リョウ、おまえもだ。最近神官じみてきやがって」
リョウは部屋に入ってからずっと黙ったままだったんだけど、このとき初めて声を出していた。
「ユーナのことはオレが守るって言ってるだろ。最初から死なせるつもりなんかねえよ」
「今日やっとカザム1頭倒せた奴がいきがってんじゃねえ! その程度の腕でユーナを守れるとでも思ってんのか!」
「あんたも見てただろ! 俺はセンシャを3体倒してるんだ」
「敵の力を利用して同士討ちさせただけじゃねえかよ! あれはおまえの実力なんかじゃねえよ。そういう姑息なやり方がオレは大嫌いなんだ!」
そのランドの言葉を聞いた瞬間、リョウの表情が変わっていた。あたしが息を飲む暇もなかった。リョウがランドの胸倉を掴み上げて、まるで搾り出すような声で言ったの。
「表へ出ろ、ランド」
「…ああ、望むところだ!」
ランドがリョウの手を振り払って、ほんの一瞬にらみ合ったあと、2人は瞬く間に部屋を出て行っちゃったんだ!
「リョウ! 待って! ランド! …どうしよう。ねえ、タキ、どうしよう!」
とっさに追いかけることができなくて助けを求めるようにベッドを振り返ると、タキは大きなため息をついて枕に突っ伏した。
「どうしよう、って。…オレはこの通りだし、君1人であの2人が止められるとも思えないし、放っておくしかないと思うけど」
「どうしてそんなこと言えるの? あたし、あんな険悪な2人を見たの初めてだよ。止められなくても止めなきゃ」
「そう思うんだったら止めておいで。オレのことは気にしなくていいから」
あたし、タキにはほんとに悪いと思ったんだけど、一言謝ってから部屋を飛び出した。いきなりのことでランドがどうしてあんなに怒ってるのか、正確なところは判らない。だけどあたしのことが原因だってことははっきりしてるもの。あたしのことでリョウとランドに喧嘩なんかして欲しくない。昔からあんなに仲が良かったのに、こんなことで仲違いするなんてぜったい良くないよ。
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