早朝に神殿の敷地を歩いていたリョウは、本当はランドの家に向かう途中だったみたい。神殿の書庫を出る頃には宿舎の人たちも活動を始めていたから、リョウは最初の予定通り村へ続く山道を降りていった。あたしはまっすぐに宿舎へ戻ったのだけど、そこには命の巫女もシュウもいなくて、目覚めたカーヤが身支度をしてるところだったんだ。あたしは簡単に今朝のことを話したあと、準備をして神殿へ祈りに行った。
今までの災厄で怪我をした人たちのことを祈り終えて神殿を出ると、扉の前にセリが立っていたの。どうやらあたしの祈りが終わるのを待っていたみたいで、気づいてさっそく声をかけてきたんだ。
「お疲れさま、祈りの巫女。今日は午前中に運命の巫女の襲名儀式があるからって、さっき宿舎に知らせが回ったんだ。カーヤに訊いたらここだって言われたから」
「おはよう、セリ。…でもそれならカーヤに言伝してくれればよかったのに」
「まあね、でも用事はそれだけじゃなくて。祈りの巫女は知らないかな、命の巫女とシュウの居所」
「まだ帰ってないの?」
「君の宿舎にも、神官宿舎にもいなくてね。まあ、食事時には戻るとは思うけど、一応彼らにも儀式には出席してもらわなきゃならないから。もしも2人を見つけたら引き止めておいて。あと、居所が判ったら一言オレに伝えてくれると助かる」
「ええ、判ったわ」
セリは忙しいみたいでそのまま石段を駆け下りていった。…そうか、ノエが運命の巫女になるんだ。儀式前の巫女には食事は許されていないし、儀式前に禊も済ませなければならないから、午前中のうちに儀式をぜんぶ済ませるなら今頃はもう各宿舎へのあいさつ回りが始まってるのかもしれない。セリにもきっと細かい用事が割り振られているんだろう。
宿舎でカーヤにセリと同じことを言われて、出来上がった食事をテーブルに並べるのを手伝っていたとき、命の巫女は帰ってきた。
「命の巫女、シュウは一緒じゃなかったの?」
あたしが早口で訊いたからだろう、命の巫女は驚いて少し身構えてしまったみたいだった。
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