「シュウ、おはよう! ねえ、トケイ持ってる?」
「持ってるけど。…この村の時間に換算して朝のゴジハンくらい…で、2人してこんな時間になにしてるんだ?」
「ゴジハン? そんなに早いのシュウガクリョコウ以来かも!」
「おはようシュウ」
「ああ、祈りの巫女もおはよう。…もしかしてユーナに起こされた?」
「ええ、どうやらそうみたい。だから朝のお散歩をしてたの」
「ったく、ユーナにはちゃんと言っておいたんだけどな。祈りの巫女、もし可能なら明日からユーナを1人部屋に寝かせた方がいいよ。オレたちの時間はこの村とは少しずれてるから」
そのシュウの言葉から察するに、シュウは早くから気づいて神官宿舎の1人部屋で過ごしていたみたいね。たぶんここで出会ったのもそれほど偶然という訳じゃなかったんだろう。
1人では退屈な散歩も、恋人同士の2人ならそうじゃないかもしれない。あたしは遠慮して宿舎に帰ろうと思ったんだけど、そのとき命の巫女が言ったんだ。
「あれ、もしかしてリョウじゃない?」
あたしが驚いて振り返ると、リョウの家がある坂道の方から確かにリョウが歩いてきていたの。…もしかしてこれも偶然じゃないのかもしれない。だって、リョウの時間は命の巫女たちと同じはず――
「リョウ!」
命の巫女たちよりも早くあたしはリョウに駆け寄る。リョウも驚いたようにあたしと、そのうしろにいる命の巫女たちを見つけた。
「こんなに早くからどうしたの? もしかして、昨日仕掛けた罠を見に行くの?」
「罠…?」
リョウは自分の時間と村の時間の違いに気づいてないのかもしれない。でも、今のあたしにはこのくらいしか思いつかなかった。
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