翌朝、カーヤのベッドで目覚めると、隣のベッドでは命の巫女が着替えをしているところだった。
「おはよう、命の巫女。早いのね」
「ごめんなさい! 起こしちゃった?」
「え? …ううん、違うと思うわ。そろそろ起きる時間なのよ。…でもどうして謝るの?」
 あたしも起き上がって昨日用意しておいた服に着替えながら訊くと、命の巫女がちょっと考えながら答えてくれた。
「シュウに言われたの。あたしたちの体の中にある時間と、この村の時間の流れ方は違うんだって。だから知らない間に早起きしちゃうかもしれないの。シュウに注意されてたのにあたし、祈りの巫女より先に着替え始めちゃったから」
 よく意味が判らなかった。そんな表情で着替えの手を止めていたからだろう、命の巫女が補足してくれる。
「1日の時間がね、あたしが住んでるところよりもこの村の方が長いの。だから少しずつ時間がずれていって、あたしが早起きになっちゃう。同じ星の上にいたらそんなことはないんだけどね。だからシュウは、ここはチキュウじゃない可能性がある、って言ってた」
「…同じ星の上、ってどういうこと? 星は夜空に輝いてる星のことでしょう? 命の巫女の村では星が早く動くの?」
「うーん、ちゃんと説明しようとすると難しいわ。でも祈りの巫女が言った通りよ。あたしが住んでるところでは、星と太陽が早く動くから1日が短いの。それほど違いがある訳じゃないんだけど。最近生活が健康的だからタイナイドケイがすごく正確に働いてるみたい」
 その説明を聞いてもさっぱり判らなかったから、あたしも諦めて着替えを再開させる。こういう話をタキなら面白がって聞くんだろうな。命の巫女の話すらもあたしは理解できないんだもん。きっとシュウの話はもっと複雑で、神官たちにはさぞかし興味深いんだろう。
 昨日と同じように互いの髪を整えて、あたしだけ髪飾りをつけて、台所に顔を洗いに行く。確かに今は早朝にも早いみたい。夏至が過ぎたばかりだから朝日は出ていたけど、周囲の宿舎はまだ寝静まってるみたいだった。
「やっぱり早かったみたい。今どのくらいの時間かな」
「さあ、でも早い人はそろそろ起き出す頃だと思うわ。…そんなに気になるの?」
 なんとなくいらいらしてる風に見える命の巫女に、あたしは不思議なものを感じていた。
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