「…確かに、祈りの巫女が一緒に行く方が正しいな」
「シュウ! だって祈りの巫女は――」
「村の至宝だ、って言いたいんだろ? だけど、オレたちがいなくなった村に残しておく方が危険だよ。とうぜんセンシャの数は今までより増えるだろうし、たとえリョウが守ってくれてたって、リョウ1人で村と祈りの巫女を同時に守るのは不可能だ。祈りの巫女が村を離れれば村が襲われる確率もかなり少なくなるだろうしね。村にとっても祈りの巫女にとっても、オレたちと一緒にいることが一番いい」
「そんなの…だってあたし、ほんとに守りきれるかどうかなんて自信ないよ」
「一緒にいて祈りの巫女を守れないなら、お前は自分を守ることもできないよ。自信がないなら今までどおり村にいた方がいい。――どうするんだ? 命の巫女のユーナ」
シュウは言って、まるで決断を迫るように、命の巫女をじっと見つめた。あたしはもう口を挟まないで2人の様子を見守っていた。
「もし、次元の扉のうしろから祈りの巫女が狙われたら」
「祈りの巫女は死ぬだろうな。だけど祈りの巫女がいなければお前が死んで、お前がいなければ1人で影を倒すなんてことは無理だろうからオレも死んで、けっきょく村も全滅する。早いか遅いかだけで結果は同じだ」
「あたしたちが影と相打ちになったらどうするの? せっかく影を倒すことができても、祈りの巫女は2度と村へ帰れなくなるんだよ!」
「…それは考えてなかったな。まあ、そこまで心配することはないと思うけど、一応訊いておこうか。…祈りの巫女、もしもオレたちのうちどちらかが死んだら、影を倒せたとしても君は村へ帰れなくなる可能性がある。それでも君は一緒に行くか?」
シュウに問われて、あたしは少しだけ考えた。確かに今から考えても仕方がないことだ。でも、命の巫女が心を決めるのに必要なら、あたしも真剣に答えを返さなきゃならない。
「そうね、いざ帰れないとなればきっとものすごく帰りたいだろうけど、でも後悔だけはしないと思うわ。今チャンスを与えられたのに何もしないでいる方が後悔が残ると思う。あたしは祈りの巫女だもの。本当に影を倒すことができたのなら、何を失っても後悔しない」
そう、たとえリョウと2度と会えなくなっても、あたしは影の国へ行くことをためらったりはしない。
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