命の巫女が持っている予言の巫女の力と、2人が持っている空間を操る力。確かにこの2つをあわせて使えば影の痕跡を辿ることができるのかもしれない。命の巫女は、会議のときのリョウの言葉をきっかけにして、自分の力に気づいたんだ。もしかしたらリョウは、2人にこのことに気づいてほしかったの…?
 ううん、それはあたしの考えすぎなのかもしれない。でもリョウだって予言の巫女の力を持ってるんだ。今まで何度も西の森を訪れていたリョウが、影が残した痕跡に気づかなかったはずがない。だとしたら、リョウはきっと2人と一緒に影の国へ行くと言い出すはずだ。ここでリョウを見失ったら、あたしは2度とリョウに会えなくなる。
「あたしも一緒に行けないかな」
 まさかあたしがそう言い出すとは思わなかったんだろう。2人とも驚いたようにあたしを見つめたまま言葉を失った。
「命の巫女はあたしが持ってる祈りの力も使えるのでしょう? でも、同時に2つの力を使うのは難しいわ。明後日ならあたしの傷も治ってるだろうし、十分役に立てると思うの。それに、影はあたしを狙ってるのよ。もしも2人が影の国へ行ってる間に村が襲われたら、あたしの力だけじゃ村を守ることなんてできない。命の巫女と一緒に行った方が村のためにはいいと思うわ」
「き、危険だよ! 祈りの巫女、君は自分で自分を守ることができないんだ!」
「それは命の巫女も同じでしょう? 命の巫女は次元の扉で影の攻撃を避けることができるのだから、あたしはそのうしろにずっとついてて一緒に守ってもらうわ。ね、ちょっとだけ考えてみて。そんなに悪い考えじゃないと思わない?」
 言いながら、あたしも自分の考えを整理することができていた。あたしと命の巫女は体力的にはそれほど差がないはずだ。次元の扉は命の巫女とシュウが2人で展開していれば盾としてこれほど有効な防具はないし、もしも盾の反対側から狙われたとしてもあたしが気づいて命の巫女に警告してあげられる。同時に祈りの力で影の動きを止めることだってできるかもしれないもの。それに、あたしが村に残っていたら、命の巫女がいなくなったその時こそが影にとってあたしを殺す絶好の機会になってしまうんだ。
 あたしが一緒に行けば、村への危険が少なくなる。その分命の巫女の危険が大きくなってしまうかもしれないけど、影の国に乗り込むつもりでいる以上、2人ともある程度の危険は覚悟してるはず。沈黙のあとのシュウの言葉は、そんなあたしの考えを裏付けていた。
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