隣にいたセリに視線を戻すと、セリはようやく気づいてくれたかというような笑顔を見せたの。あたしはセリの存在を忘れてた訳じゃなかったけど、ちょっと申し訳ない気持ちになっていた。
「今日から正式に祈りの巫女の担当神官に任命されたよ。さっそくだけどなにか手伝うことはある?」
あたしは今まで思っていたことをセリに伝えた。
「今回の災厄で亡くなった人の家族の名前が知りたいわ。その人たちの悲しみを癒す祈りをするの。たくさんいて大変だと思うけどお願い」
「それなら書庫へ行けばかなり判るだろうな。判った。今日中にそろえられるようにするよ」
「ありがとう。助かるわ」
そう、セリと簡単に言葉を交わして再び命の巫女を見ると、命の巫女とシュウ、そして聖櫃の巫女が長老宿舎を出て行くところだった。
「ねえ、3人そろってどこへ行くの?」
声に気づいて3人は歩きながらあたしを振り返ったから、成り行きであたしも隣を歩き始める。答えてくれたのは命の巫女だった。
「書庫へ行くの」
「書庫?」
「うん。…ちょっと、っていうか、かなり悔しかったから」
あたしが首をかしげると、命の巫女に代わってシュウが引き継いだ。
「リョウがさっき言ってただろ? 命の巫女の力をすべて使えるのか、って。実のところ、オレもユーナも命の巫女の力について、正確なところは知らないんだ。だから今聖櫃の巫女に相談したら、書庫に文献が残ってるかもしれないって言われてね。調べに行くところ」
「私も正確には知らないのよ。だから命の巫女の物語を読んでもらうのが1番いいんじゃないかと思ったの。シュウはこの村の文字を読めるようだから」
この村の文字が読めるの? あたしが驚いてシュウを振り返ると、シュウはちょっと照れたような笑顔を見せた。
「元はニホンゴだからね、慣れればそう難しくないよ。オレたちが使う文字よりも機能的でうらやましいくらいだ」
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