神官の中にはノエを知らない人もいたみたい。それは大げさにしても、自分が思い描いたノエと、守護の巫女が言ったノエとが同一人物であることが信じられないようだった。もちろんあたしもまさかノエが次の運命の巫女に選ばれるとは思っていなかった。
「ノエ、って。…あの子はまだ見習いじゃないのか?」
「いいえ。身体が小さいから子供のように見えるけど、彼女はもう14歳よ。とっくに見習いは終えているしなんの問題もないわ」
「そうだとしてもなにも成人したばかりの巫女でなくてもいいんじゃないのか? 年相応の巫女ならほかにいくらでもいるだろう。こんな重要な時期にそんな子供のような巫女に任せるなんて」
「こういう時期だからこそ、私はノエを推したいの。それは祈りの巫女以外全員の一致した意見よ。…祈りの巫女、あなたはどう?」
ことさらあたしを指名したのは、名前を持った巫女のうちあたしの意見だけ聞いていなかったからだろう。訊かれて、あたしは戸惑ってもいたのだけど、できるだけ冷静になるように言葉を返した。
「年齢についてだけなら、あたしは問題はないと思うわ。あたし自身は13歳で祈りの巫女になったのだし。ノエは心の強い巫女だから、運命の巫女の重責にもちゃんと耐えてくれると思う。守護の巫女やほかの巫女がノエを推すならあたしはそれを支持するわ」
あたしが言うと、それ以上意見を差しはさもうとする神官はいなくなった。残った4人の巫女と守りの長老が認めたのだから、その決定は覆すことはできないんだ。命の巫女の意見は聞いていなかったけど、彼女はそもそもノエが誰なのかも知らないだろうし、今回はそれで十分だった。
守護の巫女は、明日運命の巫女の襲名儀式を簡単に行って、正式な儀式は災厄がすべて去ってから行うことを決めて、会議を散会しようとしたの。その時だった。今までずっと黙ったままだったリョウが立ち上がったのは。
「1つ、訊きたいことがある。少し時間をもらってもいいか?」
守護の巫女が許すと、リョウは一通りテーブルを見回して、命の巫女に視線を止めた。
「村を復興するのはけっこうなことだが、影がこの先また村を襲うのは間違いないだろう。そのときに今までよりも更に強力な装備をしてくるのは間違いない。だから俺は命の巫女に訊きたいんだが。――命の巫女、おまえはいったいどんな力を持ってる巫女なんだ?」
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