祈りを終えて、迎えにきてくれていたリョウや命の巫女たちと一緒に、あたしは長老宿舎へ行った。怪我で動けないタキの代わりにあたしの隣へはセリが座ってくれる。運命の巫女とセトの席は空いたままで、その事実が場の雰囲気をより重苦しくしていたみたいだった。
「命の巫女、シュウ、そんなに遠くては話しづらいわ。こちらの椅子に移ってきて」
そう言って2人を運命の巫女の席に促した守護の巫女も、たぶん空席を見るのが辛かったんだろう。守護の巫女はかろうじて笑顔を浮かべてはいたけど、事情を知っているあたしにはその笑顔の方が痛々しく見えた。
会議は守護の巫女によって淡々と進められていった。昨日の影の来襲による村の被害。死者は村全体で84人にも及んで、そのうち巫女が運命の巫女を含めて4人、神官が3人いた。死者の中にはシュホウの直撃を受けて身元の判別が難しい亡骸もあった。6棟ある避難所や神官宿舎にも40人以上の重傷者が運び込まれていたから、その数字は更に増える可能性もあるんだ。
建物も多くの被害を受けていた。神殿の被害は神殿建物と聖櫃の巫女宿舎だけだったけど、村ではシュホウの攻撃とその後の火事によって、全体の4割近い建物が使えない状態になってしまったの。中でも深刻なのは田畑と家畜小屋の被害だった。それまでの備蓄食料だけでは今年の冬を越すのが難しくなってしまったんだ。
もしもリョウや命の巫女たちがいなかったら、被害はもっと大きかっただろう。それこそ村が全滅していたかもしれない。今回の影の来襲はそれほどまでに大きな爪あとを村に残していったんだ。
「――正直言って、最初の兆しが見えた頃にはこれほど大きな災厄になるなんて想像していなかったわ。でも、命の巫女がいてくれたからどうにかこれだけの被害で抑えることができたの。命の巫女、あなたには本当に感謝してる。この村にきてくれてありがとう」
守護の巫女が命の巫女とシュウに頭を下げると、命の巫女は勢いよく首を振って、困ったように下を向いてしまった。
「昨日の夜、命の巫女が未来を見てくれて、今日から3日間は影の来襲がないことが判ったの。村の復興については追って順に指示していくけど、今早急に決めなければいけないのは次の運命の巫女を誰にするかだわ。先ほど聖櫃の巫女と神託の巫女、守りの長老とで相談したのだけど…。みんなにもいろいろ思うところはあると思うけど、私は次の運命の巫女にはノエを推したいと思うの」
みんなが急にざわめき始める。その理由は、守護の巫女が言ったノエがまだ14歳で、あたしより2歳も若い巫女だったからだ。
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