そうして、あたしと命の巫女は2人で炊き出しをもらいに行ったり、オミの世話をしたり、そのたびに見分けがつかない周りの人の反応を楽しんでいた。しばらくするとカーヤも起きてきて、一緒に食事しながらそんなあたしたちに苦笑いを返したあと、また仕事を探しに宿舎を出て行ってしまったの。本当はあたしもそろそろ神殿へ祈りに行くべきだった。でも、命の巫女と2人だけで話をするのが楽しかったし、せめてシュウが来るまではと思って、その時間をできるだけ引き伸ばしていたんだ。
 やがて宿舎の扉をノックする音がして、顔を見合わせて微笑みあったあたしたちは、食卓の椅子に並んで座った。それからあたしが「どうぞ」と声を出すと、扉を開けて入ってきたシュウがおののいたように一瞬足を止めたんだ。
「おはよう、シュウ」
「ああ、おはよう。…どうしたの? 2人してニヤニヤして」
 シュウはあたしたちを交互に見比べて、どうやら髪飾りを探しているみたい。でも、2人ともなにもつけていないのが判ったのか、ふうっと溜息をついて椅子に腰掛けた。
「で、朝からなに? オレにどっちがどっちだか当てさせようっての?」
「そうよ。もちろん判るわよね。恋人の見分けがつかないなんて言わせないんだから」
「当てられなかったらどうなるか判ってる?」
 これ、最初があたしで、次が命の巫女の声。でも、2人とも笑顔でほとんど同じ口調で話してるから、それだけではきっと見分けることなんかできないだろう。
「祈りの巫女」
 その呼びかけには、2人とも答えない。
「ユーナ」
「「なーに?」」
 今度は声を合わせて返事をする。シュウはまた呆れたように溜息をついて、テーブルに突っ伏してしまったの。
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