「リョウ」
「…ああ」
リョウの前にもお茶を置いて、あたしは再び自分の椅子に戻ってくる。ようやくあたしに注意を向けてくれたリョウに話しかけた。
「いつごろ戻ってきたの?」
「まだそんなに経ってない。オミに訊いたらおまえは神殿へ行ったばかりだって言ってたから。身体は大丈夫なのか? 無理してないか?」
「ええ、大丈夫よ。でもちょっと疲れたわ。リョウもでしょう?」
「そうだな。今日はよく働いた」
あたしとリョウの会話を、シュウはちょっと目を見開いて聞いていた。でも口を挟むことはしなかった。
「お腹が空いたわね。…みんな、今日はここで食べていくわよね。あたし炊き出しができてるかどうか見てくるわ」
そう言ってあたしが立ち上がりかけると、横でリョウも立ち上がったの。
「俺も一緒に行く。たとえできてたとしてもおまえ1人じゃ5人分を運ぶのは無理だろう」
リョウはオミは数に入れてくれたけど、カーヤのことは入れなかった。もしかしたらオミにカーヤの居場所を聞いていたのかもしれない。空の鍋をいくつか用意して、あたしたちが連れ立って扉を出て行くのを、シュウは目を丸くしながら見守っていた。
炊き出しが行われている巫女宿舎までの往復で、あたしはリョウに村での出来事を訊いた。
「――センシャが6体いたからな、建物の被害は今までとは比べ物にならない。シュホウ1発でその線上にある家がいくつも壊れるんだ。火事も起きたから、おそらく村の建物の3割以上は使えなくなっただろう。みんな眠る場所が確保できればいいが」
「各家にベッドは多めにあるから、うまく振り分ければ何とかなると思うわ。避難所にもかなり収容してるし」
「死んだ人間も多いし、な」
リョウが言葉を切る。きっと、リョウもショックを受けたんだ。神殿に戻ってきて、広場に並んだたくさんの亡骸を目にして。リョウが再び口を開くまで、あたしは声をかけることができなかった。
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