宿舎の扉を開けると、オミはさっきの場所で仰向けに横になっていた。あたしの気配に気づいて顔を上げる。でも、無理をしたせいか自分で上半身を起こすことすらできなかったんだ。
「オミ、安心して。カーヤは怪我もなく元気だったわよ」
言いながら近づいていくと、オミはほっとしたように身体の力を抜いた。
「今どこに?」
「避難所で怪我をした人たちの世話をしていたわ。オミの世話ができなくてごめんなさいって謝ってた」
「そう」
オミはもしかしたら少しがっかりしたのかもしれない。でも表情にはそれほどあらわれていなくて、あたしはオミが照れているんだってことに気がついたの。
「ここは床が硬いし、服が汚れるわ。ベッドに戻りましょう」
そう言ってあたしが手助けをすると、オミはなにも言わず、素直に立ち上がった。
すっかり身体が大きくなったオミを苦労しながらベッドに戻して、あたしはオミと自分のために水を汲んで運んでいく。それを飲み干す頃にはオミもだいぶ落ち着いてきたみたい。背中に当てていた枕をはずして上半身を横たえたあと、あたしはオミに話しかけた。
「オミ、カーヤのことが好きなの?」
オミはチラッとあたしを見たけど、隠してもしょうがないと思ったのか、視線をそらしてわずかにうなずいていた。
「だったらこれからが大変ね。カーヤはもう18歳だし、あんまり待たせると他の人のところにお嫁に行っちゃうかもしれないもの」
「…ユーナ、笑わないのか?」
「あたしは覚えてるから。自分が13歳だったときのこと。リョウのことが大好きで、いつも背中を追い掛け回してた。そんなあたしにリョウは一緒に住みたいって言ってくれたの。…オミはあたしが13歳の頃よりもずっと大人だもんね。その想いの真剣さは判るよ」
オミは、ちょっと意外そうな顔をして、あたしをじっと見つめた。
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