カーヤを探すのは思ったより大変だった。村の男たちが走り回る中を、あたしは顔見知りの神官を探してさまよい歩く。人にぶつかって怒鳴られたり、家族が埋まって取り乱した女性に追いすがられたりして、思うように歩くことすらできなかったの。
「祈りの巫女! お願い、クロを助けて! あの下に埋まってるんだ!」
「ええ、判ったわ。すぐに祈る。でもほんの少しだけ待ってて。今使いの神官をよこすから」
 守護の巫女に身体を休めるように言われていたけど、目の前で必死に頼まれたら祈らない訳にはいかなかった。村人の中に神官を見つけて声をかける。土砂の下に埋まっている人たちの名前を書き留めてくれる神官を手配して、そのあと何度目かに声をかけた神官から、ようやくカーヤの居所を聞くことができたの。
「避難所の方にいるはずだよ。今はローグを手伝って怪我人の世話をしていると思う」
 あたしはお礼を言って、いくつかある避難所を手当たりしだいに探していった。避難所にも怪我人とその家族があふれている。いったいどれだけの人が被害を受けたというの?
「カーヤ!」
 怪我人に水を配っていたカーヤを見つけて声をかけると、あたしを見つけたカーヤはまわりに断ってあたしの方へ歩いてきてくれた。
「ユーナ、どうしてここに? 身体は大丈夫なの?」
「ええ、あたしは擦り傷だけで大丈夫。カーヤも無事だったのね。よかったわ」
「こんなところ、ユーナが来るところじゃないわ。宿舎は無事だったのだから早く帰って休んだ方がいいんじゃない? 疲れたでしょう?」
「すぐに帰るわ。カーヤも、忙しいとは思うけど、1度帰って。オミが心配してるから」
「オミが…?」
 カーヤはあたしがオミのことを言っても、さほど表情を変えることはしなかった。それより怪我人の方が気になるみたい。
「オミには心配しないように伝えてちょうだい。まだしばらく戻れそうにないから。オミの世話ができそうになくて申し訳ないんだけど」
 あたしは請け負って、カーヤには無理をしないようにとだけ伝えて、宿舎へと戻っていった。
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