あたしと会話しながらも守護の巫女は、合間に通る神官や村人たちに細かい指示を与え続けている。ここにいてもあたしは邪魔なだけなのかもしれない。でも何かできることがあるかもしれないと思って、すぐに宿舎へ帰ってしまう気にはなれなかった。
「いったいどれくらいの被害が出たの?」
「まだはっきりとは判らないわ。でもかなり多くの人たちが生き埋めになってる。暗くなる前に助けてあげなければならない。村の方でも火事が起こってるの。無事だった女性と子供たちは村へ帰したけど、影に壊された家も多いから今夜眠る場所を確保できるかどうかも判らない。正確な被害の状況は明日にならないと判らないかもしれないわ」
 そうか、リョウたちは村の火事を消し止める手伝いをしてるんだ。こちらで起こってることも伝わっているだろう。センシャはすべて倒すことができたけど、これだけ大きな被害を出してしまった。リョウだってきっと悔しい思いをしているはずだ。
「運命の巫女がまだ見つかっていないの」
 あたしは思わず守護の巫女の言葉を聞き返してしまった。
「え?」
「運命の巫女が生き埋めになっているの。セトも一緒よ。…おそらく助かってないわ」
 あたしは呆然と守護の巫女を見上げていた。その表情は淡々としていて、あたしは自分が聞いた言葉が聞き違いだったのではないかと疑ったくらいだった。
「…どうして…? 早く助けなきゃ! まだ生きているかもしれないわ! どうして守護の巫女はそんなことを言うの?」
「全力は尽くしてるわ。村の男たちが総出で救出にあたってるのよ。でも運命の巫女は助からない。あなたも覚悟していて」
 覚悟、って…。
「あたしが祈るわ! だから守護の巫女も希望を捨てないでよ!」
「いいえ、その必要はないわ。…祈りの巫女、人の寿命はあらかじめ決められているの。あなたの祈りでは変えられない。運命の巫女は自分の寿命を知っていたわ。だって、彼女には、今日より先の未来が見えていなかった――」
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