「祈りの巫女!」
「待って! 少しだけ黙ってて!」
「怪我をしたのか? だったらオレがおぶっていく! さあ早く!」
「そうじゃないの! お願い、もう少しだけ祈らせて。時間がないの!」
「なにを言ってるんだ! ここはもう――」
 ――パチン!
 気がついたとき、あたしはセリの頬を叩いていた。驚いて目を丸くしたセリに叫ぶ。
「祈りの巫女の言うことを聞きなさい! 逆らわないで!」
 頬を押さえたまま絶句するセリをそれ以上見てはいなかった。かろうじて消えずに残っていたろうそくの前に手を合わせて、あたしは再び感覚を広げていく。
 ――4体残っていたセンシャは、今は2体にまで減っていた。1つは西でリョウが倒していた。もう1つはシュウと命の巫女が倒したのだろう。リョウが乗っ取ったセンシャはぎこちない動きながらも村の南側から東へ向かっている。残ったセンシャの1つは南東、1つは北東にいて、どうやらこの北東のセンシャが神殿へ攻撃をかけたみたいだった。
 許さない。たとえ彼らにとってあたしが悪者だったのだとしても、神殿を攻撃したことだけは許せない。
 だって、神殿には村人がすべて避難していたの。今の攻撃が村人を1人も殺さなかったなんて思えない。誰の心にもシュホウの恐怖を植えつけなかったなんて思えない。あたし1人を殺すために、センシャは村人全員を傷つけたんだ。しかも肝心のあたしを殺すことさえできなかったじゃない!
 センシャへの怒りが、あたしの祈りに力を与えていた。北東にいたセンシャが動きを止める。そのセンシャの前に小さな次元の扉が現われた瞬間、センシャは攻撃を受けて命を失った。南東にいたセンシャのシュホウを命の巫女とシュウが操ったんだ。
 そして、追いついてきたリョウのセンシャが南東のセンシャを倒したとき、あたしは力尽きてその場に倒れ込んでいた。
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