感覚を広げていたあたしにはいったい何が起こったのか判らなかった。強い振動と鼓膜を突き破るほどの激しい音。何かが崩れる音がして、あたしの身体にも何かがバラバラと降り注いでいた。まぶしいほどの光とたくさんの人たちの悲鳴にさらされる。揺れが収まるまでの間、あたしは身体を縮めてうずくまったまま目を開けてみることさえできなかった。
揺れてたのはそれほど長い時間ではなかったみたい。恐る恐る身体を動かしても、あたりの悲鳴は去らなかった。顔を上げてみて驚いた。神殿の天井が半分以上崩れて消え去っていたんだ。
どうりでまぶしい訳だ。外の悲鳴だって聞こえるよ。その騒がしさの中に、神殿の扉を激しく叩く音が聞こえてきた。あたしの名前を何度も呼んでいるその声も。
「祈りの巫女! 祈りの巫女、無事なら返事をしてくれ!」
たぶんセリの声だった。扉が開かなくなってるみたい。無事を知らせるために立ち上がろうとしたそのとき、再び激しい音と振動、そして爆風が襲ってきたの。
――キャアァァーーー!
誰かの悲鳴。それはもしかしたらあたし自身の悲鳴だったのかもしれない。
神殿が攻撃されてるんだ! …センシャはまだここにはきていないはず。センシャのシュホウは、村から遠く離れたこの神殿まで届いているというの?
「祈りの巫女!」
ようやく扉が開いたのか、セリが叫んで駆け寄ってくる。あたしを抱き起こして、無事であることを知ってほっとしたようにあたしを抱き寄せた。
「セリ! これはセンシャの攻撃?」
「判らないけどたぶんそうだ。ここにいちゃ危ない。すぐに逃げるよ。さあ立って!」
そう言ってあたしを立ち上がらせようとしたセリの腕を、あたしは拒んでいた。
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