センシャに近づいていくリョウの気配。センシャが動かないよう力の限り祈りを捧げる。リョウの声が聞こえたときから、あたしにはシュウや命の巫女の声、そしてセンシャを操る邪悪な声さえ聞こえるようになっていたみたい。でも周りの声をうるさく感じながらも一切意識に上らせることはしなかった。その1体のセンシャの動きを止めることだけに全神経を集中させていた。
 リョウがセンシャの身体に取り付いて、2つの気配が重なる。気を緩めたらリョウの命は終わる。その時間は果てしないほどに長く感じた。やがてそのセンシャの邪悪な気配が最後の足掻きを残して消え去るまで。
 ――もう大丈夫だ。祈りを止めてくれ。
 再びリョウの声が聞こえる。でも…リョウの気配はまだセンシャと重なったままだった。それなのに本当に祈りをやめてもいいの?
 ――このセンシャはもういい。ほかのセンシャを止めるんだ。
 まさか、リョウにもあたしの声が届いているの? …違うのかもしれない。だけどあたしはリョウの言葉を信じて、そのセンシャから意識を遠ざけた。
 ほかの場所に意識を向けると、どうやら命の巫女とシュウとの連携で、6体のうち1体が既に倒されていたみたいだった。それでもまだ4体残っている。生きているセンシャはあたしが気づかないうちにかなり東の方へと移動していた。
 そのとき、いきなりリョウが取り付いたセンシャが息を吹き返したんだ!
 ――トツカ!
 ――リョウ!
 割り込んできたのはシュウと命の巫女の声。リョウの声じゃない。あたしはあわてて再びそのセンシャを封印しようとした。その瞬間、またリョウの声が聞こえてきたの。
 ――大丈夫だユーナ! 俺にかまうな!
 リョウが呼んだその名前はいったいどちらのユーナに向けられたものだったのだろう。一瞬戸惑ったあたしが封印の力を緩めたそのとき、リョウが取り付いたセンシャが上半身を回してシュホウを発射していた。
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