センシャの魂…?
あたし、あの時は夢中で、センシャの姿なんかほとんど見てなかった。なんとなく黒い塊のようなものだけが見えて、すごく恐ろしかったことだけ覚えてる。シュウはセンシャが人を殺すためだけに人に作られたヘイキなんだって言ってた。そんなものに戦いを挑んで、リョウ1人で魂を抜いたりできるものなの?
センシャはシュホウのほかにも近距離で使える武器も持ってる。たとえシュホウの死角から近づくことができたって、ほかの武器に殺されてしまうかもしれないじゃない!
「センシャの魂が抜けるの? そんなに抜きやすいところにあるの?」
「いや、抜きやすいところにはない。センシャは戦うことを目的に作られてるからな、そんな弱点はさらしてない」
「だったらどうするの? まさかリョウ…!」
「死ぬつもりはない。…安心しろ。俺は2度は死なない」
すごく不安だった。だって、リョウは1度死んでるんだもん。だけど、リョウを信じようって決めたのは自分だから、なにか口に出しそうな自分をぐっと抑えて言葉を飲み込んだの。
そんなあたしの表情の変化を、リョウはじっと見守っていたみたい。だけどそれについてはリョウもなにも言わなかった。
「おまえはどうするんだ。神殿に入って祈るのか?」
「うん、そのつもり。でもその前に、食事が終わったら1度神殿へ行くわ。タキの怪我のことも祈らなくちゃならないから」
そう口にしてからあたしは気づいたの。昨日の影の襲撃では、狩人たちが4人死んだんだってリョウは言ったんだ。その人たちの家族の悲しみだって癒してあげなきゃいけない。いつもならあたしがなにも言わなくたってタキがぜんぶ調べてきてくれたのに。
タキがいないことが痛かった。あたしにとって、タキはすごく貴重な存在だったんだ。もしも守護の巫女があたしに新しい神官をつけてくれたとしても、タキほど完璧にあたしのことを補佐してくれるかどうかは判らないもの。
残りの食事を掻き込みながら、あたしは改めてタキの存在の大きさを噛み締めていた。
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