あたしがベッドから起き上がって食卓へ行くと、リョウはテーブルについていて、既に2人分の食事が用意されていた。
「起き上がったりして大丈夫なのか? 痛みは?」
「うん、ちょっと痛いけど大丈夫よ。…リョウ、昨日はありがとう、ずっとついててくれて」
「ああ」
話しながらテーブルについて、あたしはなんだか心臓がドキドキしてくるのを感じたの。リョウのことなんか見慣れてるのに、まるで初めて出会った人みたい。ひと目惚れ、なんて、あたしには関係ない気がしてたけど、でもそんな感じだった。少しぼんやりした頭の片隅で思ったんだ。もしかしたら人間って、同じ人に何度でもひと目惚れできるのかもしれない、って。
カーヤは相変わらず気を利かせてくれて、オミの部屋にこもってしまっていた。リョウはあたしの声を聞いて安心したのか黙って食事を始めてしまう。その様子はいつものリョウと変わりなくて、あたしは会議のときのリョウと命の巫女のことを不安に思ってた分、少しほっとすることができたんだ。でもその安心感は今のあたしのドキドキとはまるで無関係みたいだった。
「さっきシュウと命の巫女が来て教えてくれたの。リョウは今日も狩人たちと一緒に村へ降りるのね」
「罠を作ったんだ。…おそらく役には立たないだろうが」
「そうなの? どうして? どうして役に立たないものをわざわざ作ったの?」
「狩人をこれ以上死なせないためだ」
あたしが理由が判らなくて首をかしげていたら、リョウは顔を上げてあたしに説明してくれた。
「罠を作ったのは昨日おまえがシュホウを喰らったあたりだ。昨日はおまえがいたが、今日はいない。センシャが狙ってるのが祈りの巫女である以上、神殿から逆方向の岩場をうろつく確率は低い。だからあそこに作ったんだ」
リョウははっきり言わなかったけど、あたしには判った気がしたの。リョウは狩人たちをセンシャから引き離そうとしてるんだ、って。
「それじゃ、リョウは狩人たちとは別行動をするのね」
「ああ。俺は今までと同じだ。…センシャの魂を抜く」
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