あたし、混乱してるのかもしれない。だんだん死んだリョウと今ここにいるリョウとの境目があやふやになってるの。だからシュウが言った「リョウは必要以上の無茶はしない」という言葉に素直にうなずくことができなかった。あの日死んでしまったリョウが目の前にちらついて。
「祈りの巫女が心配しない訳ないじゃん。シュウってそういうところ鈍すぎ」
「そうか?」
「自分の婚約者なんだもん、たとえどこにいたって心配だよ。…祈りの巫女、こんな奴でごめんね。デリカシーとかカケラも持ってないの、この人」
命の巫女がおどけた感じでそう言ったから、あたしはちょっと戸惑ったんだけど、すぐに笑顔を見せた。彼女の様子からはリョウに対する特別な感情が感じられなかったから。…たぶん、命の巫女にはあたしの心の動きが自然に判っちゃうんだ。もしかしたら、あたしが命の巫女に嫉妬していることも。
「とにかく早く身体を治してね。タキはまだ復帰できそうにないから、祈りの巫女が元気になったら新しい神官をつけることになるんだ、って守護の巫女は言ってたの。でも、リョウだってあたしたちが一緒より祈りの巫女の方がぜったいいいに決まってるんだから」
今のあたしには命の巫女の心の動きを感じることはできなかった。リョウのことをどう考えているのかも、あたしと同じようにセンシャにシュホウを向けられながら、その恐怖をどう克服したのかも。
「そうね。ありがとう命の巫女。…そろそろカーヤが帰ってくるわね。2人ともここで食事をしていくのでしょう?」
「ううん、残念だけど今日は先約があるの。さっき運命の巫女に誘われてしまって」
「運命の巫女? だとしたら共同宿舎の方ね。食堂で食べるの?」
「違うみたい。個室に直接きて欲しいって言われたから」
あたしはちょっとだけ首をかしげたけど、でもそれほど気にしなかった。それからすぐに2人は帰ってしまって、あたしが再びベッドに横になっていると、カーヤとリョウが相次いで宿舎にやってきたんだ。
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