「シュウ」
一言、命の巫女が咎めるように言って、それでシュウは自分たちに時間がないことに気づいたみたい。
「ああ、そうだった。…タキがまだ動けないからさ、祈りの巫女が起きてたら会議の様子を伝えるようにって言われてきたんだ。このまま少し話してても大丈夫?」
「ええ」
あたしが気を取り直してそう返事をすると、話題が変わったことに少し安心したのかシュウが話し始めた。
「運命の巫女の予言によれば、今日の午後まででとりあえず影の来襲は一段落するらしいんだ。彼女はその先の未来については何も話してなくてね。オレたちは昨日と同じように村へ降りてセンシャと対峙することになる。祈りの巫女は怪我をしていることもあるし、もしも少しでも体調がよければ神殿に入って欲しいってことだったけど、無理はしなくていいよ。守護の巫女も、今まで祈りの巫女はずっと気を張ってきたんだから、少し休んで欲しいって言ってたから」
あたしはまた昨日の悔しさを思い出して、でもそれを2人に見せる訳にはいかなかったから、気力を起こして別のことを訊いた。
「リョウは? 狩人たちはやっぱり村へ降りるの?」
「今朝からきこりたちに頼んで対センシャ用の罠を作ってもらってるんだ。とはいっても、ただ大きな岩を崖から落とすだけなんだけどね。果たしてセンシャにどれだけ通じるかは判らないけど、それを動かすために狩人たちには村へ降りてもらうことになってる。だからリョウも村へ降りるよ」
リョウはまたセンシャと戦うんだ。あたしはリョウのことが気がかりで、きっとそんな顔をしてたんだろう。シュウはほんの少し表情を曇らせたの。
「リョウなら心配要らないと思うよ。彼にはセンシャの恐ろしさはよく判ってるから。もうじき結婚する婚約者がいるのに、必要以上の無茶はしないって」
でもリョウは無茶をした。独りで獣鬼に向かっていって、あの日命を落としてしまったんだ。
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