リョウは西の森で別れていったから、そのあとあたしの荷物はタキが引き継いでくれて、2人で祈り台のある場所まで歩いていった。到着してさっそく祈りを捧げたあたしをタキはうしろで見守っていてくれたの。昨日タキが紙に書いてくれた名前はそれほど多くなかったから、祈りにもあまり時間がかからなかった。祈りを終えて、あたしが聖火以外のろうそくを消して台を降りると、タキはちょっと真剣な顔をしてあたしを迎えたんだ。
「お疲れさま、祈りの巫女。…ちょっと話があるんだけど」
 タキのその様子で、あたしはタキの話が何なのか判ってしまった。
「いいわ。…ここは暑いから木陰へ行きましょうか」
 あたしは岩場の向こうに広がる森の方へタキを促した。そこはリョウがあたしの逃げ場所に選んだだけあって、西の森よりもずっと歩きやすいんだ。完全に太陽が隠れるあたりまで入り込んで、あたしは足を止めた。振り返ると、タキはやっぱり真剣な目をしてあたしを見つめていたから、あたしは笑顔の仮面が剥がれ落ちそうになっていた。
「このあたりでいいわね。…で、話ってなに?」
 タキのこんな顔を見るのは初めてかもしれない。
「オレは、そもそも最初から関わってる。リョウが神殿に倒れていたとき着ていた服も見てるし、リョウがそのときに何を持ってたのかも知ってる。…昨日、食堂で話しながらシュウの持ち物を見せてもらったんだ。その中に、オレはリョウの持ち物によく似たものを見つけたよ」
 ――まだ、タキの出方は判らなかった。タキはこのことを誰かに話したの? それとも、まだ誰にも話さないで、あたしの真意を確かめようとしているの?
「そう。…それで?」
「シュウはリョウを初めて見たとき、彼を「トツカ」と呼んだね。シュウが最後にトツカを見たとき、彼はヤケンという動物の群れに襲われてたんだそうだ。それが今から5日前。シュウに詳しく訊いてみると、そのヤケンという動物は、リグによく似ているんだ」
次へ
扉へ
トップへ