小さなライの姿はやっぱり痛々しくて、あたしたちはそれほど長い時間触れていることはできなかった。ライがニコニコ笑ってることで余計に胸をえぐられる気がするの。病室を出てからのみんなは無言で、シュウを部屋に案内する間必要な会話以外ほとんど交わさなかった。
そこであたしと命の巫女はいったんシュウとタキに別れを告げて、祈りの巫女宿舎に戻ってきていた。その道のりを歩きながら、あたしはようやく本題に入ったの。
「実はね、あたしにも弟がいるのよ。ほら、カーヤが奥の部屋に食事を持っていってたでしょう?」
「あたしにもいるわ、弟! 3歳違いでマサオミっていうの」
「マサオミ? あたしの弟はオミよ。やっぱり3歳違いだし、あたしたちみたいに似てるのかしら」
「シュウがね、この村はあたしたちの世界とはパラレルの関係だから、ほかにもそっくりな人がいるはずだって言ってたの。きっとオミはうちのマサと似てるわね。会わせてもらえるの?」
命の巫女はあたしの思惑には気づいてたみたいで、ことさらはしゃいでくれる。本当だったらあのライを見たあとだもん、ためらう気持ちがあって当然なんだ。オミは今怪我をして寝たきりになっている。もちろん命の巫女はそのことには気がついているはずだし、そんなオミに会いたいと言ってくれるのは、あたしが安心して村へ降りられるように考えてくれてるからなんだ。
宿舎の扉をノックして開けると、カーヤがちょうど洗濯に出かけるところだった。テーブルの上には見慣れないものがいくつか置いてある。あたしにはそれが、命の巫女のポケットから出てきたものなんだってことがすぐに判ったの。
「お帰りなさいユーナ。…探求の巫女、訊いてからにしようかとも思ったんだけど、このままって訳にもいかないから、あなたの服も一緒にお洗濯させてもらうことにしたの。ずいぶん汚れているようだし。かまわないかしら」
「ええ、ありがとう。…本当にごめんなさい」
「カーヤ、言い忘れてたわ。さっきの会議で探求の巫女が命の巫女だってことが判ったの。それと、誕生の予言を受けてくれたから、命の巫女とシュウはもうこの村の一員になったのよ」
カーヤはずいぶん驚いたようだったけど、このことで少しだけ2人の距離が近づいたようにあたしには思えたんだ。
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