タキはちょっとだけ考えて、すぐに答えてくれた。
「残念だけど、オレは祈りの巫女付きの神官だからね。君が村へ降りている間はやっぱり傍にいないとまずいよ。…守護の巫女も、探求の巫女が命の巫女だって判った時点で担当の神官を付けてくれればよかったのに」
「命の巫女の神官はシュウよ。その役目は左の騎士以外には考えられないでしょう? 守護の巫女もそう思ってるのよ。だから、シュウが村に慣れるまでの間はタキに代わりをお願いしたいの」
「…判った。それじゃ、影が現われる頃になったら2人を神殿まで迎えに来るよ。それまでは祈りの巫女と一緒に村にいる」
 タキにしてみればそれでもずいぶん譲歩してくれてたみたい。でも、その間独りで宿舎に残されちゃう命の巫女は不安そうな顔をしていたの。せめてカーヤがもうちょっと2人に打ち解けてくれてたらよかったんだけど。そんなことを考えて、不意にあたしは思いついたんだ。
「そうだ! シュウ、あなた国に弟はいる?」
「…いや。オレは1人っ子だよ」
「この村にはシュウの弟がいるの。怪我をして動けないでいるから、お昼寝の前にぜひ会ってあげて。シュウはライの本当のお兄さんと同じだもの。ライだってきっと元気付けられるわ」
 シュウはちょっと驚いた風で、神官宿舎へ向かいながらも「新しい発見だ…」とかぶつぶつ呟いてたんだけど、命の巫女が視線を向けるとちょっと照れたように微笑んだの。この2人、いつの間にかすっかり仲直りしてしまったみたい。それとも一時的に休戦してるのかな。本当のところは判らなかったけど、それはあたし自身にとっても歓迎できることだったから、あたしは蒸し返すようなことはしなかった。
 ライと会うのが、あたしは少し怖かった。だから今までずっと忙しさを理由に遠ざかってたんだけど、この2人と一緒なら会えるような気がしたの。だから本当は、シュウとライを会わせたかったっていうよりも、あたしの方がライと会う理由が欲しかったんだ。
 運良くローグは宿舎にいて、あたしたちにライの状態を説明してくれた。怪我の方はだいぶよくなってはいるけど、足を固定してるからまだ抱き上げたりはしないで欲しいって話だった。そのローグに付き添われて、あたしたちはライの病室に入った。
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