守護の巫女が会議に休憩を入れたのは、もしかしたら命の巫女と直接話してみたかったからなのかもしれない。食後リョウと一緒に長老宿舎へ行くとすぐに会議が再開されて、その席で守護の巫女から、命の巫女が今日の影の襲来のときに村へ降りることが告げられたの。
「――これは命の巫女とシュウ、2人の希望でもあるの。村では祈りの巫女と行動を共にすることになるわ。祈りの巫女、リョウ、タキ、2人をお願いね」
「ええ、判ったわ」
あたしは笑顔で了承したけど、心の内は複雑だった。あたしはできるだけ命の巫女をリョウに近づけたくはなかったから。
午後の会議はさほど長い時間ではなくて、最後に守護の巫女が全員の役割を確認して無事に終了した。ほかのみんなは自分の役割を果たすためにそそくさと宿舎を出て行ったから、あたしとタキが命の巫女に近づく頃にはほとんどあたしたちだけになっていたの。
「2人ともお疲れさま。…シュウ、眠そうね。居眠りしなかった?」
「なんとか踏み止まったよ。でも限界。タキ、頼むから宿舎の空きベッド手配してくれよ」
「なんだよ、たった1回徹夜したくらいでだらしないなあ。オレより5歳も若いくせに」
そういえば、シュウが徹夜したってことは、タキだって徹夜してるはずなんだ。シュウとタキはすっかり打ち解けてしまっていて、笑い合いながら宿舎を出ていく。あたしたちもあとについて外に出たんだけど、その直後にリョウが声をかけてきたんだ。
「俺はいったん家に戻る。おまえはどうするんだ?」
「そうね、あたしも宿舎に戻るわ。でも準備があるから少し休んだらすぐに村へ行かなくちゃ。リョウもでしょう?」
「ああ。…だったら宿舎に迎えに行く」
そう言って、リョウは命の巫女の視線を無視するように森の家への坂道を降りていった。あたしはいくぶんほっとしながらリョウのうしろ姿を見送って、命の巫女を振り返ってにっこり笑いかけたあと、前を歩くタキとシュウに声をかけたの。
「ねえ、2人とも。あたしとリョウはすぐに村へ降りなきゃならないの。だからシュウのお昼寝には付き合えないわ。タキ、悪いけどシュウのお昼寝が終わったら、命の巫女とシュウを村へ案内してくれる?」
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