シュウと探求の巫女は小声で話し合っていた。声を聞くことはできなかったけど、探求の巫女の提案に否定的ではないことだけは雰囲気で判ったの。2人には選択の余地がないからそういうことになったのかもしれない。でも、もしも2人が拒否したとしても、あたしには守護の巫女が2人を村から追い出すとは思えなかった。
 やがてシュウは誕生の予言を受けることを承知して、でも順番はシュウの方を先にして欲しいと言って、それだけは譲らなかった。
「――身体を楽にしていて。少し時間がかかるけど、できるだけ身体を動かさないでいて」
 シュウの席の近くに空いた椅子を引いてきて、神託の巫女とシュウは向かい合って座っていた。あたしたちは自分の席から離れないでその様子を見守る。シュウの手を取った神託の巫女は、呼吸を整えながら目を閉じた。
「なんか妖しげなコーレージュツを見てるみたいだな」
「…シュウ、お願いしゃべらないで」
 シュウはちょっと照れたように苦笑いを浮かべて、それからはまじめな顔をして目を閉じた神託の巫女の顔を見つめたの。どうやらシュウって緊張すると黙ってるのが苦痛になるタイプみたい。周りのみんなはちょっと不安そうで、でも好奇心もちらっと覗かせていたけど、探求の巫女だけはほかのみんなとは比べ物にならないくらい不安そうな表情でその様子を見守っていた。
 やがて神託の巫女は目を開けると、自分に集中している視線に微笑みを返した。
「間違いないわ。彼は左の騎士よ。…本来ならこんなに大勢がいるところで話すことではないけど、本人も知っていることだしかまわないでしょう」
 その言葉を聞いて、部屋の中は安堵ともつかない空気に満たされた。
「嘘は言っていなかったようね。…神託の巫女、続けてで悪いけど探求の巫女もお願い」
 そうして、シュウが力づけるように探求の巫女の肩を叩いて彼女と席を交代すると、あたりは再び沈黙に包まれる。神託の巫女は探求の巫女の手を取った。でも、ほんのわずかに触れただけですぐに手を離してしまったの。
「まさか…! あなたは探求の巫女なんかじゃないわ! だって――」
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