その守護の巫女の言葉に驚いたのは、シュウや探求の巫女だけじゃなかった。あたしを含めた巫女や神官たちがみんな驚いていたの。だって、今までのシュウの話を聞けば、シュウと探求の巫女があたしたちの村の味方になってくれそうなのは間違いなかったんだもん。
でも確かに守護の巫女が言うことも間違ってなかった。あたしは関わってなかったから詳しく知らないけど、影が襲ってきた最初の日に村にいたほかの土地の人たちは、それが判った時点ですべて村から避難してもらってたはずだから。
シュウは驚いてはいたけど、やがて何かに気づいたのか、冷静な口調で答えていた。
「オレもユーナも今この村を追い出されるのは困る。オレたちが祈りの巫女に呼び出されたのなら、彼女の願いをかなえない限りこの怪異は終わらないだろうからね。だけど、それなら同じようにこの村だって困るはずだ。オレたちが祈りの巫女の祈りに呼び出されたのなら、オレたちを追い出したりしたら悪くすれば村が滅びることになる」
守護の巫女は厳しい表情を崩さずにきいていた。
「あなたは何か抜け道を用意しているはずだ、守護の巫女。村の決まりを破らず、オレたちをこの村に置くことができる抜け道を」
そのとき、守護の巫女はふっと微笑を漏らした。
「面白い言葉を使うのね。それに左の騎士だけあって頭もいい。…確かに、私はあなたが言う抜け道を用意しているわ。でも理由はそれだけじゃないの。私はやっぱり、とつぜん神殿に現われるなんてことをしたあなたたちを本当には信用できないんだもの」
その守護の巫女の言い分が判ったのか、シュウは沈黙で答えた。
「この村の人間はすべて、生まれたときに誕生の予言を受けるわ。さっきも少し説明したけど、村に子供が生まれたとき、神託の巫女がその子供に触れて、その子が持つ運命や宿命を予言するの。その予言を受けることで子供は初めて村人として認められることになる。…探求の巫女、シュウ、あなたたちも同じ予言を受けてもらえないかしら」
「…それはどういうものなんだ?」
「簡単よ。神託の巫女が触れるだけで、痛みも違和感もないわ。あなたたちが本当に探求の巫女で、左の騎士なら、予言にはそれが現われてあなたたちの言い分は証明される。同時に村人として認められるからこの村にいることができる。けして悪い取引ではないと思うけど」
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