剣道部のけたたましい連中が帰ってしまったあと、オレと逸実との間に、再び静寂が訪れた。だけどオレは、さっきほど気にならなかった。なぜって、良く判らないけど、それならそれで、けっこう安心できるって事を、オレが知ってしまったから。
左腕の点滴の中には、どうやら睡眠薬でも仕込んであるらしい。横になったオレに、逸実はふとんをかけてくれた。目を閉じて、眠りに入る。きっと今日は、良く眠れることだろう。優しい夢を見られることだろう。
だからオレは、これが現実だったのか、夢だったのか、正直よく判らないんだ。眠りにつく寸前に、逸実がオレに言ったこと。
「…一郎。守ってくれてありがとう。あたしを助けてくれてありがとう。一郎は今まであたしが見た中で、1番かっこいい冒険者だったよ…」
そしてオレは、世界中で1番やすらかな眠りについた。
それからオレ達がどうなったかって? 何にも変わらんよ。剣道やって、勉強やって、そして、ふと気がつくと、オレは逸実の居場所を探していたりする。ただ、それだけなんだ。
――了――
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