「とぼけるなんてお前らしくないじゃないか。オレ達、ちゃんと知ってるんだぜ。お前が部活サボって逸実と駈落したってのは。もう学校中の評判だ。――とにかく、オレたちは賛成だ。どんな理由で駈落なんて事になったのか、オレ達に話してみろよ。力になるぜ」
こいつ、目がマジだ。ってことは本当に…
「きゃははははは…」
突然、逸実が笑いだした。少し驚いたけど、そんな逸実の笑った顔を見ていたら、オレも何だかおかしくなって、笑いだした。呆然とする部員達を尻目に、オレ達は笑いつづけた。
「逸実、オレ達駈落したんだって」
「嘘みてぇ」
なんて、世の中は平和なんだろう。どうしてこんなに平和なんだ? オレ達世間では、駈落してたことになってるんだから。
笑いながら、オレは初めて平和を実感していた。オレ達もまた、平和な人間達の1人だ。逸実もオレも、こいつらと何1つ変わるところなんか、ないじゃないか。
「な、何だよ。駈落じゃなかったのか?」
狼狽する部長に、オレは言った。
「判ってんだったらじゃまするなよ。2人の語らいの時間をさ」
「…こいつは参ったな」
部長も笑いだして、オレ達は笑いの嵐。そのなかで、オレは本当に、平和な世の中を感じていた。
ともかくこれで、大団円。
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