「みんなって、あの、日本刀持ってた奴も?」
「あれは奇跡でしたね。君よりも早く意識を回復して、病院のベッドの上でタバコふかしてましたよ。首の骨がずれて鞭打ち症になったくらいだ。悪い奴っていうのは、丈夫だね」
良かった。あいつ、死んでなかったのか。あんな奴死んだからって、オレは痛くも痒くもないけど、逸実のなかには一生傷が残っちまう。どんな形であれ、人を殺しちまったら、やっぱりそれは罪だから。
大人達が帰り、オレと逸実は2人きりになった。オレは何だか少し気恥ずかしくて、なかなか逸実の目を見られなかった。逸実の方はどう感じているのか、少し黙っていたけれど、やがて沈黙を破りにかかった。
「傷の具合、どう?」
オレの怪我、たいした事はない。が、15日の初試合までには治りそうになかった。
「神経も骨も異常はないって。全治1ヶ月ってとこかな」
「残念。白けた試合になっちまうな。お前がいなきゃ盛り上んないよ」
オレ、ただ笑って見せた。ほんとのとこ、満足してるんだ。お前のこと守り切れたから。オレの大切な幼なじみ。オレの理想に1番近い奴。
「忙しかったのか? 午前中」
「調書取ってたんだ。お前はもう少しあとだろうけどな。それから――」
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