3階に上がったとたん、オレはきえーっという掛け声と共に、誰かに襲われた。間一髪、木刀で防いだが、奴の顔を見ることは出来た。
「倉橋」
黒幕の息子、聖徳学園の大将、倉橋貢だった。
「待ってたぜ、釜本。お前がオレ達の生活をめちゃくちゃにしたんだ。オレも親父ももとの生活には戻れやしない。お前も生かして帰すつもりはないから覚悟しろよ」
なんてこった。確かに十中八九予想してたことだけど、まさかお前が追っ手だなんて。お前がオレ達を殺そうとするなんて。お前、あんなに燃えてたじゃないか。オレが聖徳の剣道部を変えてやるんだって。
「倉橋、待てよ」
「問答無用だ」
木刀と木刀。力は互角。まともにやったら、一体どちらが勝つだろう。昔、オレの剣道仲間の坂敷が言った。オレ達は剣道を通じて人をなぐっている。オレ達は人をなぐりながら強くなっていくって。そしてオレ達は少しづつ、人をなぐることへの罪悪感を失ってゆくのかもしれない。オレ達は少しづつ、人間らしい心を失ってゆくのかもしれないって。
オレは奴の剣を受けながら、心が決まった。こいつを倒しても、オレは生きなきゃならない。この、逸実のためにも。オレは剣道のルールを忘れて、反則技ばしばし使って応戦した。その時、オレの視界の端に、さっきの拳銃男が映ったのだった。
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