1階はかなり騒がしくなってきていた。おそらく、部屋の中を虱潰しに探しているんだろう。いずれ2階にもやってくる。早くここを出なければ。
 用心深く、オレは部屋をでた。そして、柱の陰に身を隠す。今の状態で1階に行くのは自殺行為だ。ある程度の人数を2階に誘き出さなければ。何人くらいいるのか、オレ達はまだ把握しちゃいない。1対1なら、木刀を持ったオレたちだ、負けるようなことはないだろう。だから、とにかく1人づつ、人数を減らしていかないと。
 車1台で5人、2台で来たとして10人。多くてもそのくらいだ。そして、その1人目が、オレたちの前に、姿を現した。
「あ、お前たち」
叫ぶ隙を与えちゃいけない。1度に来られたら、勝てないんだ。満身の力でもって一撃。男は声もなくその場に倒れ込んだ。
「ダメだ。すぐに捕っちまう。逸実、3階へ行くぞ」
振り返った視線にちらっとかすめた逸実は、倒れた男を凝視していた。その目には、迷いはなかった。
 さっき男が来たのとは逆の階段へ、オレ達は走っていった。うしろから来た2人目の追っ手が、倒れた男を見つけて叫ぶ声が聞こえる。振り返らずにオレ達は走った。そして、銃声。
 しまった。拳銃を持っている奴がいるとは思わなかったぜ。反対の壁に当たったところを見ると、幸いにして腕はいいとはいえないが、こいつは完璧、オレ達が不利だ。だからといって、生き残ることを忘れるようなオレじゃない。絶対に、絶対にオレは帰ってみせる。

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