倉橋理事長って人は、学校経営のほかにも、サラリーローンなんかもやっていて、そこで金を借りて返せなかった人に臓器の提供の話を持ちかけていた。借金のカタにね。そしてM大の研究室で、持病もちの金持ちに移植する。もちろん謝礼金たっぷり。ビデオのなかには移植を受けた人の名前も実名で入っていて、世間ではそりゃぁもう大変なパニック状態だった。もちろん、オレ達もびっくりだ。事件のことも、そして、その黒幕が好敵手倉橋の親父だって事も、その2人が未だ野放しだって事も。
その時、逸実が立ち上がってテレビを消した。
「飯作るよ。おなか減ったでしょ」
結局、飯と洗濯は逸実の仕事になったのだ。そのかわり、オレはこの広い館を1人で掃除している。
「メニューは?」
「海老ドリアとほうれん草のソテー。スープはメキシコ風。文句ある?」
「ありません」
飯を作る奴には頭が上がらんと言ったのは、うちの親父様。まさに、その通りだった。
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