手紙を開くとそこには、いつもの親父の筆跡と、新聞記事の切り抜きが2枚入っていた。
「前にも書いたとおり、例のビデオテープによって告発された人物の大部分は、警察によって事情聴取されている。しかし、行方の知れない倉橋理事長とその息子の2人は、未だに発見されず、警察の捜査は膠着しているとのことだ。お前達も十分に行動に注意するように。それから、どうやら佐川信一を殺したと見られる男が、東京湾で死体で発見された。血液型、刺し傷などが、現場の状況と一致することから、警察では犯人と断定したそうだ。新聞記事を送るが、その死体と今回の事件との関係は、秘密になっているとのこと。お前達も承知しておくように。それでは、風邪など引かんように気をつけてな。――父」
新聞記事にも、新しい事実は発見出来なかった。
「黒幕がまだ野放しなんだ。何か、予想より時間がかかりそうな気がするね、一郎」
「そうだな」
 今までの5日間に判ったことを簡単に説明してみると、まず、例のビデオテープ、中身はかなり悲惨なものだったらしい。殺された男のいたM大の研究室での研究のビデオなのだが、映っていたのは何と、違法の臓器移植の映像だったのだ。

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