別荘には毎日、速達が届く。これはオレが考案した方法で、1度関係ない郵便局を通過させて送るから、オレ逹がどのへんにひそんでいるか、表面上はまったく判らないようになっているのだ。方法は簡単。二重封筒にしておいて、表の封筒は郵便局宛にしておく。封筒をあけるともう1つの封筒と小さな紙片が入っている。そこには、『消印を集めています。満月印を押して送り返してください』って書いてある。宛先はオレ達の別荘ってわけだ。逆をやれば、オレ達も家に郵便が送れる。郵便局はたくさんあるから、足がつく心配はまずないって事だよな。欠点のタイムラグは速達で補うから、少なくとも2日後には、オレ達は情報を手にいれることが出来るようになるんだ。
 今日ですでに5日が経過している。テレビの中は正月番組のオンパレード。そいつを見ながら菓子を食う逸実に、オレは手紙を運んでいった。
「あれ、また親父さんから?」
表面上、オレ達は前と少しも変わっていなかった。
「日付は31日の4時になってる。読んでやろうか?」
「うん」

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