「目標って? 何が?」
「一郎」
 ああ、それでか。どうりで打ち合ってる時の目付きが違うと思ったんだ。試合のときとも微妙に。でもそれなら、オレちょっと反則だな。女相手に力押しってのはなしだぜ。
「逸実、もう一戦やろうぜ」
「おう!」
 もう1つ気付いたこと。お前って何か、オレの剣道に似てきたぜ。踏み込みに間の取り方。みんながオレと逸実の剣道が似てるって噂してたの、オレはただ、剣士としてのタイプが似てるんだと思ってた。違うんだな。お前ってば、こんなにオレのこと見てたんだ。
 それにしても、逸実の奴、ちょっと目標が低すぎやしないか。
「ストップ! ちょっとたんま。休憩休憩」
「何だよ一郎。もうばてたのか」
「お前なぁ。オレは運転疲れしてんだよ。移動中寝てた奴と一緒にしないでくれ」
「ああ、そうか。そうだよな」
 オレは息をついて階段に腰かけると、逸実もとなりに座って息をはあはあさせていた。こいつってば、本当に意地っぱりだ。ぶっ倒れそうなのは自分の方だろうが。
「お前とやってるとオレ、もっと強くなれそうな気がする」
逸実は何も言わず、意味不明って顔でオレに振り返った。

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