「ナイフもなかっただろう? 秘密がもれるのを恐れて、ナイフと死体を…もしかしたら生きてたかもしれないけど、持ってった奴がいるんだ。オレ達が通り過ぎてから、死体が発見されるまでの約20分間の間に。オレ、あの男を追っかけてたのって、せいぜい3人くらいがいいところだと思う。だけど、チンピラなんかじゃなくて、もっと用心深い奴。もし直後に交番なんかに駆け込んで、マークされちまったらおしまいだと思ったんだ」
警察を抱き込んでる可能性。なんて言ったら怒るだろうな、とか思ったから、オレはそのことについては言わない事にした。
「良く判りました。どちらにしても、ご通報いただいて感謝しております。これからも伺うことがあるかもしれませんが、ご自宅の方でよろしいですか?」
その時親父は初めて口を開いた。
「親戚のところにやる予定です。冬休み一杯はそちらの方におりますので、連絡は私が」
「判りました。それでは私達はこれで」
立ち上がっていこうとする2人の背中に、オレは冷ややかに言った。
「おっさん、『倉橋理事長』だ。忘れるなよ」
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