「だってオレ、死にたくなかったもん。既に2人死んでるしね」
案の定、2人の刑事は顔を見あわせた。この時オレは、オレ達2人の推理が間違っていないことを確信したんだ。
「2人っていうのは…?」
「あいつを殺した奴さ。そう考えないと辻褄があわないんだ。男が殺されたのは、あの品物を持ってたからだろ。だとしたら、刺した奴が品物を持たずに逃げる訳ないじゃないか。幸いと言っちゃ何だが、あそこで何があったのか、あの時点で気付いた奴はいないんだから、オレだったら、1度刺して死ななかったんだから、もう1度刺そうとするぜ。1度突き刺したナイフを抜いて、もう1度…。刺された男だって必死だっただろう。振り返ってナイフをもぎとって刺し返すぐらいやったんじゃないだろうか。相手が叫び声を上げたりしないように、喉かなんかを狙って」
オレが言葉を切ると、2人の刑事は歯切れの悪い感じで何かごそごそと言った。そしてやがて、意を決したかのように、猫背の刑事が言ったのだった。
「確かにあの場所には1人の人間では到底流し切れないような大量の血痕があった。血液型は全てA型だったがね。警察では秘密裏に、もう1人の被害者を追っていたのだが」
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