オレが話しおわると、年かさの方の猫背刑事が言った。
「じゃあ簡単に復習するよ。まず君達が道場を出たのが6時25分ごろ。現場を通りかかったのが35分ごろで、被害者から品物を受け取った。そして走って現場をあとにして、40分ごろにロッカーに品物を隠した。そのあと道着と生徒手帳を別のロッカーに入れて鍵を駅ビルのトイレのなかに隠した。その間は10分ぐらいかな」
「そのくらいです」
「まっすぐに駅に入り、切符を買って、58分の下り電車に乗った。間違いないかね」
「大丈夫です」
逸実はオレの隣で黙り込んでいた。親父も、オレを叱るでもなく、ただ腕を組んでソファに腰かけていた。オレは結構、居心地の悪いものを感じていた。
「それで、品物がどんな物なのか、君達は見たかね」
「見てないです。触ったのも逸実だけで、それもせいぜい5分間。外側は白っぽい布で、少し血がついていたのを覚えています。逸実はビデオテープじゃないかって言ってますけど」
 猫背は1つ溜息をついた。そして、オレに向き直って言った。
「これは重要なことだよ。君に聞くけど、なぜその場で警察に届けなかったんだね」
さて、ここからが正念場だ。オレ達にとってのね。

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