「ところで一郎。少し作戦なんて物を考えてみたんだけど、聞いてくれないか。で、もし穴があったらふさいで欲しい」
「OK」
オレの理想――気が強くて、土壇場に強い女。今はまだ考えるまい。
その日1日、オレとしちゃ結構忙しかった。全ては逸実の計画通り。穴は全部塞がってる筈だ。
朝親父様に、7時に帰るように言った。重要な話があるからって。親父はけげんそうな顔をしながらも、判ったと一言だけ言った。どうも、オレが朝っぱらから新聞なんぞをコピーしているのを見て、親父なりに考えるところがあったのだろう。
洗い替えの道着を持って逸実と学校に向かった。部活の途中で抜け出し、職員室で電話を借りる。そこで警察に連絡。人徳だとオレは思うのだけど、警察でもオレの話は重要視され、オレは初めて、刑事を自宅に呼び出すという快挙をやってのけたのだった。約束の時間は夜7時半。出来るだけ目立たないように、2人の刑事には時間を10分ずらして入るように指示した。インターフォンにも個人名を名乗るようにと。
昼飯を食べてからオレと逸実は道場へ。オレ達の冬休みの日課そのものに行動し、絶対に怪しまれないようにとの配慮。石橋をたたき割りそうなほどの慎重さだ。
そしていよいよ、夜がやってくる。
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