「なあ、逸実。肝心な話しようぜ」
「さっきノートに書き出しといたんだ」
逸実が広げたルーズリーフには、意外にきれいな文字で、いろいろ書きつらねてあった。
1,刺された男は誰か、どういう人間か
2,預かりものは何か、どういう内容か
3,誰に渡すつもりだったか
4,刺した人間は誰か、どういう人間か
5,倉橋理事長とは誰か、どういう人間か
6,私達の立場は
とりあえず、判り易くまとまっている。
「あの男が渡すつもりだったのって、この倉橋理事長って奴じゃないのか?」
「そうとは限らないよ。あいつ、『これを、倉橋理事長』としか言わなかったじゃないか。『倉橋理事長には渡すな』だったかもしれないぜ。とにかく、1は明日の新聞待ちだね。2は少し待つとして、一郎、5は判るべ」
「このあいだ試合で行ったもんな」
「聖徳学園高校の理事長だと思う。息子には悔しい思いをしたし」
「オレが仇とっただろ」
このまえの練習試合、聖徳との勝ちぬき戦で、副将の逸実は敵の大将倉橋貢との一戦で1本負けをくらったんだ。大将のオレはそいつに1本勝ちして、まあ、面目は保ったって訳だ。逸実は負けず嫌い。相当くやしがってたって訳。
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