鈍くて悪かったわね。
 本当に本当に判らなかったわよ。
 だって、考えてもみなかったんだから。
 若原君が普段誰にでもやさしいから、きっとやさしさの延長だ、って思ったんじゃない。
 それはあたしが悪いんじゃなくて、若原君がやさしすぎるのがいけないんじゃないの。
 あたしが思いを口にせずに、ただふくれていると、若原君、あたしの顔を覗き込んだの。
 とっても、やさしい目。
 こんなにやさしい目をしていたかな。
 あたしが見なかっただけかもしれない。
 若原君は、本当にいつもやさしかったんだもん。
「オレ、もう1つお前にいいたいことがある。どうしてオレがお前の友達にならなけりゃいけないんだ。オレはあの一言で、もうだめかと思ったんだぜ。ったく、ここまでオレのこと悩ませやがって。オレがどんな思いでお前のこと見てたのか、ぜんぜん判ってないだろ。ユーリルに襲われたとき、オレがどんなに悔しい思いしてたかなんて。――あいつ、このことに関してだけは許せんな。ほかのことは許してやるけど――お前がなんとか子爵達にちやほやされてるの見て、オレうしろで腹立ってしかたがなかった。あそこにいた奴らみんな、オレが姫に惚れてるの判っただろうな。ったく、何だってこう…」
 しゃべり続けている若原君を見ながら、あたしは何だかとってもおかしくなっていたの。
 若原君だって、あたしの気持ちなんか判ってなかった。
 あたしが好きなことを見ぬくことだってできなかった。
 あたしが若原君の一言で、一喜一憂してたことも。
 若原君だって、あたしとおんなじくらいにぶいじゃない。
 それなのに、若原君はあたしのことばっかり責めてて…
 おかしくて…ううん、何だか若原君がかわいくて、あたし思わず笑ってた。
 そんなあたしを見て、若原君はブツブツいうのをやめて、言ったの。
次へ
扉へ
トップへ